教育を通して、地域社会に地熱理解の促進を

2023年09月06日

NPO法人「スパっと鳴子温泉自然エネルギー」は2014年の創設以来、地熱の理解促進や認知向上のために、宮城県有数の温泉地域である鳴子・中山平を拠点に、住民や次世代を担う生徒を対象として講座を開催しています。ベースロードパワーは賛助会員として、活動を微力ながら支援させていただいています。今回、運営メンバーの1人で、再生可能エネルギーや地熱に関する講義を行う、東北大学の村松教授にお話をおうかがいしました。

――スパっと鳴子自然エネルギーの設立経緯を教えてください。

2011年の東日本大震災による影響を受けて、原子力発電所がすべて停止に追い込まれたことをきっかけに、東北大学は代替エネルギーの研究・開発に関する国家プロジェクトを請け負いました。東北地方は温泉が豊富です。そこで私のチームは、地域のエネルギーである地熱を活用して、バイナリー発電を開発することにしました。

ここ鳴子・中山平地区は宮城県有数の温泉地であり、地熱ポテンシャルも非常に高い地域です。源泉の成分はスケールが多く含まれていないため、バイナリー発電に適しています。それが私たちの中山平地区との出会いです。温泉旅館で使用されていない井戸を活用して、バイナリー発電の開発をしました。結果、バイナリーがこの地域で機能することが確認できました。

このバイナリー発電所の運営を、NPO法人を設立して引き継ごうかと考えましたが、採算性の難しさから断念しました。しかし、プロジェクトを進める中で痛感したのは、地域の人に地熱を正しく理解してもらうことが重要だということ。このため、NPOを通じて地熱理解を深め、認知を向上させる活動に舵を切りました。

――温泉地域でのバイナリー発電開発に対する課題は何でしょうか。

地元の地熱に対する正しい理解です。皆さん、地域の熱を活用することには賛成なのですが、やはり温泉への影響を懸念します。たとえば、温泉用の熱源は地下10メートル、深くても100メートルの層から取り出す一方で、地熱発電用の熱源はもっと深い1000メートルぐらいのところから取り出すので、温泉への影響はほとんどないと言われています。またフラッシュ型の大規模地熱発電と、既存の井戸などを使うバイナリー発電ではコストや開発期間なども異なります。こうしたようなことを理解していただくためには、専門家による丁寧な説明が重要になってきます。現在は地元住民や生徒を中心に座学や実験、現地視察などの講座を開催していますが、今後は温泉事業者にも広げていきたいと思っています。

――バイナリー発電運営のカギは何でしょうか。

スケールメリットだと思います。バイナリー発電は大規模地熱発電と比べて出力が低いので、投資コストを考えると、1ヶ所だけで運営するのは厳しいと感じています。だからこそ、地元理解を促進し、複数の場所で発電事業を行うことで、スケールメリットが出てきます。

――ここ鳴子・中山平地区は温泉の成分や温度的にもバイナリー発電に適した地域だとおっしゃいました。バイナリー発電を活用して、どのように地域を活性化していけばよいのでしょうか。

バイナリー発電は電気をつくるだけでなく、熱の多段階利用ができます。たとえば発電に使用した熱水は、浴用に使えるだけでなく、暖房や融雪、温室栽培や養殖などにも使えます。バイナリー発電所が増えれば、こうしたカスケード利用も広がります。また熱を活用した新たなビジネスも生まれると思います。

エネルギーコストが高騰するなか、政府は現在、エネルギーの地産地消を推進しています。地域特有のエネルギーを使わない手はありません。東京などの大都市でのエネルギーコストが高いのであれば、熱エネルギーがふんだんにある地域で、ビジネスを始めればとても効率的です。「熱のあるところにビジネスが集まる」――そんな構図ができれば、人口減に悩まされる地域の活性化につながると思います。

――そのために重要なのが地熱の認知向上なのですね。

おっしゃる通りです。2050年のカーボンニュートラル社会を牽引していくのは、今の若い世代です。彼らが若いうちから環境課題や地域の熱である地熱を学び、それを活用した新たなビジネス創出のための柔軟な発想力を養うことが大切です。だから私たちスパっと鳴子温泉自然エネルギーは、教育が最優先で取り組むべき課題だと考え、毎年、鳴子中学校や古川黎明中学・高等学校などで出前授業を実施しています。

――最後に、ベースロードパワーのような地熱開発会社に期待することは何ですか?

私たちはここで先行事例を作りたいのです。そのために、ベースロードパワーのような会社に、日本だけでなくグローバルでバイナリー発電所の成功事例をたくさん作ってもらいたいと思っています。熱の多段階利用も含めて、成功事例がたくさんできれば、地熱の認知向上にもつながります。そうすれば、参入する地域や団体が増えていくと思います。開発会社と地域が一緒に取り組めば、カーボンニュートラルでかつ生き生きとした地域づくりができると信じています。そのためにも、私たち大人は地道に地熱教育を実施していくことが重要です。

村松淳司教授のプロフィール

東北大学副理事・教授。

東京大学大学院工学系研究科で化学エネルギー工学を専攻。1988年より東北大学で選鉱製錬の研究に携わり、鉱山・地熱に関する知識を深める。2001年より現職。愛知県出身

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