「山翠パワー地熱発電所」運転開始〜地域創生企業、グローバル地熱開発企業、温泉旅館が協働し、地域の熱を活用して地域活性・再エネ促進〜

2022年04月26日

ベースロードパワージャパン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役平塚龍太、以下、ベースロードパワー)と、地熱を活用した地域創生事業会社ふるさと熱電株式会社(本社:熊本県阿蘇郡、代表取締役赤石和幸、以下、ふるさと熱電)および旅館山翠(所在地:熊本県阿蘇郡小国町わいた温泉郷、代表取締役社長 熊谷和昭、以下、山翠)は協働し、温泉バイナリー発電「山翠パワー地熱発電所」(総出力99キロワット)の運転を開始しました。

手前が第1発電所、奥にあるのが第2発電所とその左上方部に温泉井戸。1本の温泉井から得られる蒸気を2ヶ所の発電機まで輸送している 

山翠パワー地熱発電所は山翠の既存温泉井戸から噴出する蒸気を利用して、2ヶ所に設置したバイナリー発電機(Climeon社製:スウェーデンに本拠を置くバイナリー発電機メーカー)まで蒸気の輸送を行い、蒸気と低沸点媒体を熱交換することで、タービンを回転させるバイナリー発電方式を採用しています。年間の発電力量は約700MWhを予定しており、これは一般家庭の約200世帯分の年間使用電力量に相当します。

発電した電力は、再生可能エネルギー特別措置法の固定価格買取制度(FIT)を活用し、九州電力送配電株式会社に売電します。またエネルギーの地産地消を目的に、余剰の温泉水や発電に使った蒸気を凝縮した熱水を、浴用として旅館山翠に提供します。

今回の協働事業は、豊富な地熱資源を活用して地域活性化を推進するふるさと熱電と、既存の温泉井戸を活用して旅館事業の価値向上を目指す山翠、そして再生可能エネルギーである地熱を通して地域創生を支援するベースロードパワーの想いが一致したことにより実現しました。

山翠パワー地熱発電所では、温泉旅館で利用している1本の温泉井から得られる蒸気を2本に分離し2ヶ所の発電機まで蒸気輸送をしていますが、これを実現するためには、圧力平衡を保つ設計など高い技術的要件が求められます。今回、ふるさと熱電、ベースロードパワーが中心となり、配管設計など高いエンジニア技術を有する東京エネシスとバイナリー発電機メーカーClimeonが各々の技術力を結集することで技術的課題を解決し2機の安定稼働を維持します。

発電した電気は九州電力送配電より中央電力株式会社に引き渡され、同社が推進するプロジェクト「RE100対応・温泉旅館地熱発電プロジェクト」を通して、全国を対象としてこの取り組みに賛同する電力消費者に提供されます。

RE100対応・再エネマンションプロジェクト

https: //denryoku.co.jp/news/news_release/1256/

地域の資源である地熱の活用

環太平洋火山帯に属する日本列島は地熱資源が豊富に存在しています。地熱の温泉利用は日本が古代から受け継いでいる伝統と文化です。日本には現在、約20,800軒の温泉施設があり(参照:日本温泉総合研究所)、地熱の温泉利用は利用熱量全体の9割を占めていることから、地熱は生活資源であると同時に観光資源としても重要な役割を担っています。

温泉バイナリー発電で地域の地熱資源を有効活用

温泉バイナリー発電とは、温泉井から取り出した熱水や蒸気を熱交換して、沸点の低い媒体を蒸発させてタービンを回し発電する発電方式です。発電に使った熱水や蒸気を凝縮して温水にし、浴用として温泉施設で2次利用します。

地熱資源を積極活用することで脱炭素化に貢献

日本では現在、政府が推進する2050年の脱炭素化に向けて、再生可能エネルギーによる発電を増強していくことが求められています。地産地消の特徴を持つ可能性のある地熱発電は、日本のエネルギー政策において今後ますます重要になると考えています。一方で、日本はアメリカ、インドネシアに次ぐ世界第3位の地熱資源大国でありながら、電源構成に占める地熱発電の割合はわずか0.2%(参照:石油天然ガス・金属鉱物資源機構)と、豊富な地熱資源量をいまだ十分に活用できていないのが現状です。こうしたことから、地熱資源が豊富な地域社会と協働して活用することで、カーボンニュートラルに貢献していきます。ベースロードパワーの平塚代表取締役は「地熱資源が豊富な日本で、地域の熱をフル活用して地熱発電所を建設・運営することで、日本の再生可能エネルギーの導入拡大と地域社会の活性化に貢献していきたい」と述べています。

地熱と地域社会の共生

日本の温泉地域の中には過疎化や高齢化によって温泉事業を維持していくことが難しくなっている施設が増えつつあります。長引くコロナ禍による影響がこれに拍車をかけています。こうした地域課題の解決策の一つして、地域独自の資源である地熱を活用して、地域社会の活性化に役立てることができます。「山翠パワー地熱発電所」はふるさと熱電と山翠という、地元企業と温泉旅館が主体となり、地域創生・脱炭素化を理念とするグローバル企業のベースロードパワーが手を取り合って、地域社会の活性化と再生可能エネルギーの推進をしていくことで、地熱と地域社会の共生に貢献します。ふるさと熱電の赤石代表取締役は「温泉旅館が参加して地熱発電をすることで地域が活性化し地域創生ができると同時に、旅館にとって新たな収入源にもなります。全国の温泉地で同じような取り組みをしていきたい」と意欲を見せています。


わいた温泉郷―至る所で蒸気が自噴する豊富な地熱エリア

熊本県阿蘇郡小国町にあるわいた温泉郷は、九重連山の麓にある人口7,000人あまりの山間の温泉地です。周辺には泉質が異なる6つの温泉地が点在し、蒸気が吹き出す源泉が至る所で見られるなど地熱資源が豊富な地域です。全人口に占める高齢者の割合が約5割と、他の温泉地と同様、過疎化や高齢化の課題に直面しています。わいた温泉郷では地熱開発における紆余曲折の歴史を経て、2015年に最初の地熱発電所が運転開始しました。以来、温泉バイナリー発電を含めた地熱発電所が同地域内に数カ所あり、また発電に使われた熱水をパクチーやバジルなどの温室栽培に利用するなど、地域が一体となって地熱を活用している全国有数の温泉地となっています。

ベースロードパワージャパンについて

スウェーデンに本拠を置く投資会社ベースロードキャピタルの完全子会社で、地域社会および電力会社と協業して地熱発電所開発の許認可・建設・運営を行う2018年創業の事業会社です。企業理念は、再生可能エネルギーの普及を通してより自立した地域社会をつくり、人と地球の調和をめざすこと。グローバルの長期視点の投資家に支えられ、地熱資源のある地域の活性化、再生可能エネルギーの促進に努めます。

ふるさと熱電について

わいた温泉郷のある熊本県小国町に本拠を置く地熱発電開発会社です。企業理念である「地熱と地域の力で社会システムを再構築するソーシャルリデザインカンパニー」を目指すべく、地元に本拠を置き、住民が設立した合同会社わいた会と共に地熱発電を運営しています。現在、フラッシュ型のわいた第1地熱発電所(2000キロワット)および、その余剰熱水を活用したわいた第1地熱バイナリー発電所(150キロワット ベースロードパワーとの共同運営)の運営を行っています。わいた第2フラッシュ発電所(5000キロワット)も数年以内に運転開始予定。本理念を日本全国の温泉地域に浸透させることを目指しています。

旅館山翠について

わいた温泉郷にある6つの温泉地の一つ「はげの湯温泉」にある温泉旅館。阿蘇を一望する高台にあり、混浴露天風呂をはじめ、洞窟風呂など10種類の温泉があります。

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